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本記事は投資情報の提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあり、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。掲載情報は執筆時点のものであり、税制・手数料は変更される可能性があります。

結論から

日本トランスシティ(東証プライム・銘柄コード9310・業種:倉庫・運輸関連業)は、2026年6月12日時点で配当利回り 4.01%、過去10年平均(2.39%)の 約1.7倍 の水準にある銘柄である(出典:Yahoo!ファイナンス、2026年6月12日)。

三重県四日市港を本拠とする中部地区最大の倉庫業者(1895年創業)で、20年以上減配なし・5年連続増配(配当金は2021年3月期の10円から2026年3月期の43円へと5年で4倍以上)という還元履歴、自己資本比率57.9%、営業CF 連続黒字(確認できる10年超)、PBR 0.66倍という指標面の割安さといった、配当インカム狙いの観点で確認したい要素が複数そろっている。一方で、ROEは6.5%前後と一般合格基準の8%に届かず、景気敏感な事業特性を持つ点が、ディフェンシブ系の高配当株とは異なる読み方を要求する。

本記事では、1株配当金・売上高・営業利益率・EPS・配当性向・配当利回り・ROE という複数の指標の推移を6本のチャートで可視化し、この銘柄が高配当株テーマで注目される根拠と、同時に把握しておきたい懸念事項を中立に整理する。

なお、本記事は特定銘柄の購入を推奨するものではない。中立分析として判断材料を提示するに留まり、最終的な投資判断は最新の同社IR・有価証券報告書・適時開示を確認のうえ、ご自身の責任で行うこと。

本記事は2026年6月12日時点で Yahoo!ファイナンス等で公開されている情報および同社IR資料・適時開示の公開情報をもとに記載している。株価・配当利回り・各種指標は日々変動するため、最新値は必ず同社IRサイト・有価証券報告書・決算短信および各証券会社の公式ツールで確認してほしい。

銘柄概要

項目内容
銘柄名日本トランスシティ
銘柄コード9310
市場区分東証プライム
業種倉庫・運輸関連業(総合物流)
時価総額約720億円(2026年6月12日時点、小型株区分)
配当利回り(予想)4.01%(2026年6月12日時点)
過去10年平均配当利回り2.39%
連続増配5年連続(20年以上減配なし)
予想PER10.01倍(過去10年平均 約9.38倍・類似企業 約12.4倍)
PBR0.66倍(1倍割れ)
自己資本比率57.9%
ROE(2026年3月期)6.52%
営業CF連続黒字(確認できる10年超)
株価傾向長期で上昇傾向(2026年6月12日時点 1,084円、5年で約2倍)

(出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート、2026年6月12日時点。最新値は同社IRおよび Yahoo!ファイナンス・各証券会社ツールで要確認)

何をしている会社か

日本トランスシティは、三重県四日市港を本拠とする中部地区最大の倉庫業者である。創業は1895年と古く、130年以上の実績とノウハウを持つ老舗の総合物流企業として、業界内でも高いポジションを確立しているとされる。

事業は倉庫にとどまらず、物流の各機能を垂直に束ねている。

  1. 倉庫事業 — 中核事業。四日市港を中心とした保管・荷役機能で、輸入原料貨物などの取り扱いが多いとされる
  2. 港湾運送・陸上運送 — 港湾では輸出自動車や自動車部品の取り扱いが多く、中部地区の製造業(とくに自動車産業)のサプライチェーンを支える
  3. 国際複合輸送 — 海外は米国・東南アジア・中国・欧州に拠点を拡充。大メコン圏(アジアの大河「メコン川」流域の一大経済圏)の陸上輸送にも注力しているとされる

2022年には住友電装などと合弁で、三重県にグループ最大規模の物流拠点を整備したと報じられており、地盤である中部圏への投資を続けている。直近決算(2026年3月期)では、料金適正化や業務効率化が進み、営業利益・経常利益・純利益がいずれも過去最高を更新したとされる。

一方で、荷動きは景気に連動するため、事業特性としては景気敏感株に分類される。医薬品や食品のようなディフェンシブ業種とは異なり、景気後退局面では保管貨物・港湾貨物・輸送量の減少が業績に直結する点は、この銘柄を読むうえでの大前提となる(最新の事業セグメント別売上高は、同社IRサイトの「決算説明資料」「有価証券報告書」で要確認)。

高配当株として注目される6つの根拠(チャートで読む)

ここからが本記事の中心である。これは投資推奨ではなく、銘柄として観察対象に残したくなる構造を、チャートとデータで整理した分析である。

根拠1: 20年以上減配なし・5年連続増配 — 配当金は5年で4倍以上に

まず最初に確認したいのが、配当そのものの推移である。日本トランスシティの1株あたり配当金は、公開チャートおよび会社資料によれば20年以上にわたり減配がなく、5年連続で増配しているとされる。2021年3月期の10円から2026年3月期の43円へと5年で4倍以上に増えており、2027年3月期の会社予想は43.5円とされている。

1株あたり配当金の推移(円)

2017〜2026年実績・2027年は会社予想。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。値は読み取りに基づく概算。

50 25 0 10円 39円 43円 43.5円 '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '27予
1株配当金(実績) 会社予想

チャートを見れば一目瞭然だが、この銘柄の配当推移は「じわじわ増配」型ではなく、2025年3月期の大幅増配(13円→39円、3倍)で段が変わった型である。これは後述するとおり、配当性向が17.9%から40.7%へ引き上げられたことと同時に起きており、還元方針の転換(配当性向40%目安化)によるものと読める。方針転換による増配は歓迎材料だが、性向の引き上げは一度きりの効果である点は後段で改めて確認する。

根拠2: 売上高は長期で緩やかに拡大 — 直近決算は3利益とも過去最高

配当の源泉は最終的に売上と利益である。日本トランスシティの売上高はこの10年で約905億円から約1,250億円へと約1.4倍に拡大しており、事業の縮小局面にはない。2023年3月期の過去最高(約1,335億円)には届いていないものの、直近決算(2026年3月期)では料金適正化や業務効率化が進み、営業利益・経常利益・純利益が過去最高を更新したとされる。

売上高の推移(億円)

2017〜2026年実績・2027年は会社予想。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。値は読み取りに基づく概算。

1500 1000 500 0 905 1335 1250 '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '27予
売上高(実績) 会社予想

2022〜2023年3月期にかけて売上が急伸したのは、コロナ禍後の国際物流の混乱(海上運賃の高騰など)が追い風になった時期と重なる。その反動で2024年3月期は減収となったが、その後も1,200億円台を維持しており、特需のかさ上げ分を除いても長期のトップラインは緩やかな右肩上がりと読める。売上が特需期の最高値を更新できていない点は、後段の懸念事項(景気敏感)と併せて確認したい。

根拠3: 営業利益率は3%台から6%台へ改善傾向

売上が伸びても、利益率がしぼんでいれば配当原資は確保できない。日本トランスシティの営業利益率は、公開チャートによれば2017〜2020年の3%前後から直近は6%台後半へと明確に改善している。料金適正化(値上げ)や業務効率化が進み、稼ぐ力が向上しているとされる。

営業利益率の推移(%)

2017〜2026年実績・2027年は会社予想。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。値は読み取りに基づく概算。

10 5 0 3.26 6.81 '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '27予

物流業は装置(倉庫・車両)と人手に依存する労働集約的な業態で、利益率が一桁台にとどまるのは業界共通の構造である。その中で2018年3月期の2.45%を底に、6%台後半まで利益率を切り上げてきたトレンドは、値決め(料金適正化)と効率化の成果を示すデータと読める。一方で、水準そのものは高収益企業とは言えず、収益性には改善の余地が残る点は後述のROEと併せて確認する。

根拠4: EPSは波を伴いつつ長期成長、配当性向は40%目安へ転換

配当の安定性を測るうえで重要なのが「配当性向(配当金 ÷ EPS)」の水準である。日本トランスシティのEPSは年による波が大きいものの長期では成長しており、直近決算(2026年3月期)で過去最高を更新したとされる。そして配当性向は、2025年3月期にそれまでの10〜20%台から40%台へと一段引き上げられた。会社の目安は40%とされ、実績もその水準にある。

EPS(棒:円、左軸)と配当性向(線:%、右軸)

2017〜2026年実績・2027年は会社予想。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。値は読み取りに基づく概算。

120 60 0 60% 30% 0% 15.9% 40.8% '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '27予
EPS(円・左軸) EPS会社予想 配当性向(%・右軸)

ここで注意したいのは2点ある。第一に、EPSは2018年3月期・2024年3月期のように景気や荷動きの変動で大きく落ち込む年があること。配当性向40%を保ったままEPSが急減すれば、機械的には配当も減る計算になるため、景気後退局面での配当の耐性は事前に織り込んでおきたい。第二に、配当性向の引き上げ(10〜20%台→40%)による増配は一度きりの効果であること。性向がすでに目安の40%に達している以上、今後の増配ペースはEPSそのものの成長次第というフェーズに入っている。

根拠5: 配当利回り4.01%は過去10年平均(2.39%)を大きく上回る

日本トランスシティの過去10年平均配当利回りは2.39%である。直近の4.01%という水準は、自社の平均より明確に高い領域に来ている。チャートを見ると、2017〜2024年は概ね2%前後で推移していた利回りが、2025年に4%台へ跳ね上がっており、これは前述の大幅増配(還元方針の転換)の影響が主因と読める。

配当利回りの推移(%)と過去10年平均

2017〜2026年の年次ベース、末尾は2026年6月12日時点。基準線は過去10年平均 2.39%。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。

5 4 3 2 1 0 過去10年平均 2.39% 4.39% 4.01% '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '26.6

注目したいのは、この銘柄の場合、株価は5年で約2倍に上昇しているにもかかわらず利回りが高水準にあるという点である。利回り上昇の主因が「株価下落」ではなく「増配」にある構図は、株価下落型の高利回り銘柄とは性格が異なる。ただし、利回りが高いことそれ自体は「買うべき根拠」にはならない。増配の持続性(=EPSの成長)と、景気後退時の配当の耐性を併せて確認する必要がある。

根拠6: PBR 0.66倍・自己資本比率57.9%の堅い財務 — ただしROEは8%未満

最後に、財務と収益効率を確認する。日本トランスシティは自己資本比率57.9%、営業CF 連続黒字(確認できる10年超)という堅い財務を持ち、指標面では予想PER 10.01倍(類似企業 約12.4倍)・PBR 0.66倍と割安な水準にある。一方で、ROEは公開チャートによれば一般的な合格基準とされる8%を、10年を通じてほぼ下回って推移しており、収益効率には課題が残る。

ROE(自己資本利益率)の推移(%)

2017〜2026年実績・2027年は会社予想。基準線は一般的な合格水準とされる 8%。出典:Yahoo!ファイナンス公開チャート(2026年6月12日)を元に作図。

20 15 10 5 0 一般合格基準 8% 7.41 6.52 '17 '18 '19 '20 '21 '22 '23 '24 '25 '26 '27予

PBR 0.66倍という1倍割れの水準は、「解散価値より安く評価されている」とも「収益性の低さゆえに評価されていない」とも読める両義的な数字である。ROEが8%に届かない企業のPBRが1倍を割り込むのは、市場の評価としてはむしろ整合的であり、割安さの解消(株価の再評価)には収益性・成長性の改善という材料が必要になる。東証がPBR1倍割れ企業に資本コストを意識した経営を要請している流れの中で、同社の還元強化(配当性向40%目安化)もその文脈で読める点は、今後の資本政策を観察するうえでの視点になる。

6つの根拠の要約

ここまでの指標を整理すると、配当・財務は堅い一方、収益効率には課題が残るという凹凸のある構造が見えてくる。

指標状態配当継続にとっての意味
1株配当金20年以上減配なし、5年で4倍以上還元方針の転換(性向40%目安)で段が変わった
売上高10年で約1.4倍(2023年ピークは未回復)長期では緩やかな拡大、縮小局面ではない
営業利益率3%台→6%台後半へ改善料金適正化・効率化で稼ぐ力が向上
EPS・配当性向EPSは波を伴い成長・性向40%目安増配余地はEPS成長次第のフェーズ
配当利回り平均2.39% → 直近 4.01%増配主導の利回り上昇(株価下落型ではない)
ROE・PBRROE 6.52%(8%未満)・PBR 0.66倍財務は堅いが収益効率に課題、万年割安の指摘も

ディフェンシブ系の高配当株と異なり、この銘柄は景気敏感な事業特性と収益効率の課題を抱えたまま、還元強化で利回りが切り上がったタイプである。「数字が良い=買い」ではない点を、次のチェックリストと懸念事項で確認する。

高配当株チェックリスト14項目で評価する

ここまでの分析を踏まえ、高配当株を観察するときに一般的に使われるチェック観点に照らして、日本トランスシティがどの項目に当てはまり、どの項目に当てはまらないのかを視覚的に整理する。

凡例:✓ 該当(基準を満たす) / △ 要注意(継続観察が必要) / ✗ 該当せず(基準を満たさない)

高配当株チェックリスト × 日本トランスシティ(9310)

一般的な高配当株評価で確認される14観点に対する、2026年6月12日時点の判定。判定は本記事独自の整理であり、投資推奨ではない。

  • 1. 配当利回りが市場平均(東証プライムの単純平均 約2%台)を上回る 4.01%

    自社の過去10年平均 2.39% も大きく上回る水準。市場平均の最新値は日本取引所グループの集計で要確認。

  • 2. 過去10年以上、減配がない 20年以上減配なし

    リーマンショック・コロナショックを含む期間で減配なしとされ、直近は5年連続増配。一般的なチェック基準(5〜10年連続減配なし)を大きく超える。

  • 3. 配当性向に余裕がある(目安 70% 以下) 40.8%

    2026年3月期実績ベース。70%以下に収まる一方、会社の目安である40%にすでに到達しており、これ以上の増配にはEPS成長が前提になる点に留意。

  • 4. 営業キャッシュフローが安定して黒字 連続黒字(10年超)

    配当の原資は最終的にキャッシュ。確認できる範囲で営業CFは連続黒字を継続。倉庫・物流のストック型収益が下支えしていると読める。

  • 5. 自己資本比率が一定水準以上(目安 40% 以上) 57.9%

    6割近くと高め。借入依存度が低く、金利上昇局面でも財務負荷が増えにくい構造。財務の健全性は本銘柄の強みの一つ。

  • 6. EPS(1株純利益)が直近で横ばい〜成長 長期で成長・直近過去最高

    年による波は大きいが、長期では成長しており直近決算(2026年3月期)で過去最高を更新したとされる。ただし2018年・2024年のような急減年がある点は項目11・12と併せて確認。

  • 7. 売上高が長期で減少していない 10年で約1.4倍

    2023年3月期の過去最高(海上運賃高騰の特需期)には届いていないが、長期のトップラインは緩やかな右肩上がりで、縮小局面ではない。

  • 8. ROEが一般合格水準(目安 8% 以上) 6.52%

    10年を通じて8%をほぼ下回って推移し、直近も6%台。財務が厚い(自己資本比率57.9%)ことの裏返しでもあるが、収益効率には明確な課題が残る。改善トレンドの有無は継続観察。

  • 9. PERが市場平均(東証プライム概ね15倍前後)以下 10.01倍

    類似企業(約12.4倍)も下回る。ただし自社の過去10年平均は約9.38倍とされ、低PERが常態化してきた銘柄である点には注意(割安=株価上昇余地、とは限らない)。

  • 10. PBRが過度に高くない(目安 1倍前後) 0.66倍

    1倍を大きく割り込む水準。解散価値より安い評価だが、ROEの低さと表裏一体の「万年割安」の指摘もある。東証のPBR1倍割れ改善要請への対応(資本政策)は観察ポイント。

  • 11. 事業の構造的な追い風 景気敏感・荷動き次第

    物流は景気に連動する業態で、保管貨物・港湾貨物・輸送量の減少は業績に直結。中部圏の自動車産業への依存度も高く、輸出環境・生産動向の影響を受けやすい。料金適正化・効率化の持続が成長の鍵。

  • 12. 業種特有の規制・地理的リスク 災害リスクの地理的集中

    経営資源が中部・関東・関西に集中しており、該当エリアでの大規模地震等の発生時には影響が甚大とされる。四日市港を本拠とする立地特性上、港湾インフラの被災リスクも固有の論点。最新は有報「事業等のリスク」で要確認。

  • 13. 時価総額と流動性(目安 数千億円以上) 約720億円

    東証プライム内では小型株区分。大型株と比べ出来高が小さく、株価の振れ幅(ボラティリティ)が大きくなりやすい。売買時の流動性・値動きの荒さには留意が必要。

  • 14. 人件費・燃料費などコスト変動への耐性 労働集約・燃料依存

    物流はドライバー・倉庫作業員など人手と燃料への依存が大きい業態。人手不足を背景とする人件費上昇や燃料費の変動はコストに直接効く。直近は料金適正化で転嫁が進んだとされるが、転嫁力の持続性は継続観察。

該当 9 項目 要注意 4 項目 該当せず 1 項目

本チェックリストは、公開情報をもとに「高配当株として観察する際に一般的に確認される観点」を機械的に当てはめた整理である。各項目の基準値は一般論であり、絶対的な合否基準ではない。該当数が多い=買うべき、少ない=避けるべき、という単純な投資判断はできない。とくに「要注意」「該当せず」と判定された項目は、実際に保有する場合には継続的にウォッチすべきリスク要因となる。最終的な投資判断は、最新の有価証券報告書・決算短信・適時開示を必ず確認のうえ、ご自身の責任で行うこと。

このチェックリストの結果を要約すると、配当履歴・財務・指標面の割安さ(項目1〜7、9〜10)では基準を満たす一方、収益効率(項目8)が基準未満で、事業環境・地理的リスク・流動性・コスト耐性(項目11〜14)に継続観察が必要な項目が並ぶ、という構造になる。

つまり「配当と財務は堅いが、それを支える事業が景気敏感で、収益効率にも課題がある」銘柄である。PBR 0.66倍という評価は、まさにこの項目8・11〜14の論点が織り込まれた結果とも読める。「利回りと財務の良さだけを見て買い、景気循環リスクを見落とす」のが景気敏感株の典型的な失敗パターンであるため、上記の項目は保有を検討する場合に必ず自分で最新情報を再確認したい観点となる。

同時に把握しておきたい懸念事項

楽観的な材料だけで判断するのは適切ではない。元データ(Yahoo!ファイナンス)に明示されている懸念事項に加え、公開情報から読み取れる注意点を併せて整理する。

1. 景気敏感 — 荷動きの減速は業績に直結

総合物流は景気悪化時には荷動きも減速する業態であり、保管貨物や港湾貨物、輸送量の減少は業績に直結するとされる。とくに同社は港湾で輸出自動車・自動車部品の取り扱いが多く、中部圏の自動車産業の生産・輸出動向の影響を受けやすい構造にある。EPSが2018年3月期・2024年3月期に大きく落ち込んだ実績は、この景気敏感性の表れと読める。配当性向40%を保ったままEPSが急減する局面では、配当の維持力が試されることになる。

2. 大規模災害 — 経営資源が中部・関東・関西に集中

同社の経営資源は中部・関東・関西にかたまっているため、該当エリアでの大規模地震等の発生時には影響が甚大とされる。とくに本拠の四日市港は南海トラフ地震の想定影響エリアに近く、港湾・倉庫という物理資産に依存する業態であるがゆえに、地理的集中リスクは他業種より重い論点となる。災害リスクへの備え(拠点分散・BCP)は有価証券報告書等で確認したい。

3. 万年割安株 — 株価上昇には起爆剤が必要との指摘

PER・PBRは割安感が強いものの、収益性や成長性には課題があり、更なる株価上昇には起爆剤が必要との指摘がある。同社の過去10年平均PERは9.38倍とされ、低い評価が長期間常態化してきた。「割安だからいずれ上がる」という期待は、ROE 6%台という収益効率が改善しない限り実現しにくい可能性がある。配当インカム目的であっても、株価の再評価を前提としたシナリオには慎重でありたい。

4. 増配の「段替わり」は一度きり — 今後はEPS成長次第

2025年3月期の大幅増配(13円→39円)は、配当性向を17.9%から40%台へ引き上げたことによるものと読める。性向の引き上げによる増配は構造的に一度きりであり、すでに会社目安の40%に達している以上、今後の増配はEPSの成長がなければ続かない。2027年3月期の増配予想が43円→43.5円と小幅にとどまるのは、このフェーズ転換を示すデータと読める。

5. 特需の剥落と売上の頭打ち

2022〜2023年3月期の売上急伸には、コロナ禍後の国際物流混乱(海上運賃高騰)という特需の寄与があったとみられ、売上高は2023年3月期の過去最高を更新できていない。直近の最高益は料金適正化・効率化という内部努力によるところが大きいと読めるため、値上げ余地が一巡した後にトップラインの成長が続くかは、継続的な確認対象となる。

6. 小型株ゆえの流動性と値動きの荒さ

時価総額約720億円は東証プライムの中では小型株区分であり、大型株と比べて出来高が小さく、株価の振れ幅が大きくなりやすい。市場全体の急変時には、業績と関係なく需給要因で株価が大きく動く可能性がある点は、保有比率を考えるうえで留意したい。

私が確認したいと考えているチェックポイント

私自身がこの銘柄を観察対象として整理する場合に、確認しておきたいと考えているポイントを列挙する。これは投資推奨ではなく、私の個人的なチェックリストである。

  1. 同社IRの最新「決算短信」「決算説明資料」で、売上・営業利益率・EPS・営業CFの直近トレンドと、料金適正化(値上げ)の進捗・持続性を確認する
  2. 有価証券報告書の「事業等のリスク」で、景気変動・大規模災害(地理的集中)・燃料費/人件費上昇に関するリスク開示の内容を確認する
  3. 株主還元方針(中期経営計画・株主向け説明資料)で、配当性向の目安(40%)の位置づけと、自己株買いを含む総還元の考え方を確認する
  4. セグメント別の構成で、倉庫・港湾運送・陸上運送・国際複合輸送の収益比率と、自動車産業への依存度を確認する
  5. 資本政策の動向で、PBR1倍割れに対する経営側の認識と対応(東証の要請への回答・ROE目標の有無)を確認する
  6. 自分のポートフォリオ全体に占める個別株比率(個別銘柄1社あたりの上限)と、景気敏感株の比率が、事前に決めた範囲に収まるかを確認する

これらは「銘柄が良いか悪いか」を判定するためのリストではなく、「自分が説明できる範囲で判断材料を揃えるためのチェックリスト」として整理している。

高配当株テーマで読むときに私が意識していること

最後に、高配当株を観察するときに私が意識している原則を3点だけ書いておく。

  1. 利回りの数字だけで判断しない — 配当利回りは「配当金 ÷ 株価」で算出される。この銘柄の場合は増配主導で利回りが上がった構図だが、増配の持続性(EPS成長)まで確認しなければ、利回りの高さは評価できない
  2. 連続増配・減配なしの実績は将来を保証しない — 20年以上減配なしは事実として強い情報だが、未来の業績次第で方針は変わる。とくに景気敏感株では、景気後退局面でEPSが急減したときに配当がどうなるかを、性向の水準とセットで毎年確認する習慣を持つ
  3. 個別株は分散の中の一部に留める — 個別銘柄1社の業績悪化・災害・市場退場リスクは常に存在する。長期積立のコアは全世界株式・先進国株式といった広く分散されたインデックスファンドに置き、個別株はサテライト枠として総資産の中で位置づけを明確にしておきたい(本サイトのインデックス積立に関する記事も参考にしてほしい)

特定の銘柄に集中するほど、その1社の動きが自分の資産全体に与える影響は大きくなる。とくに景気敏感の小型株は値動きが荒れやすいため、「サテライト枠の範囲で観察する銘柄」として位置づけると、相場の急変に対しても運用継続が止まりにくくなる。

最終情報確認日と公式情報源

本記事の数値・指標は2026年6月12日(配当利回り基準日)時点で公開されている情報をもとに記載している。株価・配当・各種指標は日々変動するため、最新値は以下の一次情報で確認してほしい。

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よくある質問

日本トランスシティはどのような会社ですか?
三重県四日市港を本拠とする中部地区最大の倉庫業者で、1895年創業の老舗企業です。会社公表資料や各種報道によれば、倉庫・港湾運送・陸上運送・国際複合輸送を手掛ける総合物流企業で、港湾では輸出自動車や自動車部品、輸入原料貨物の取り扱いが多いとされます。2022年には住友電装などと合弁で三重県にグループ最大規模の物流拠点を整備したと報じられており、海外は米国・東南アジア・中国・欧州に拠点を拡充し、大メコン圏(アジアの大河「メコン川」流域の一大経済圏)の陸上輸送にも注力しているとされます(最新の事業構成は同社IRの決算説明資料で要確認)。
配当利回り4.01%という水準は高いのですか?
2026年6月12日時点の配当利回りは4.01%でした(出典:Yahoo!ファイナンス)。日本トランスシティの過去10年平均配当利回りは2.39%とされており、自社の過去推移と比較すると直近の利回りは明確に高い水準にあります。これは2025年3月期に配当金が13円から39円へ大きく増えた影響が主因と読めます。ただし利回りの数字だけで投資判断はできず、配当性向・営業CF・財務体質・景気敏感な事業特性を併せて確認する必要があります。
配当金が「5年で4倍以上」というのはどう評価すればよいですか?
チャート(出典:Yahoo!ファイナンス)では、1株あたり配当金は2021年3月期の10円から2026年3月期の43円へと5年で4倍以上に増え、20年以上減配がないとされます。とくに2025年3月期の大幅増配(13円→39円)は、配当性向が17.9%から40.7%へ引き上げられたことと同時に起きており、還元方針の転換(配当性向40%目安)によるものと読めます。一方で、配当性向の引き上げによる増配は一度きりの効果であり、今後の増配ペースはEPS(1株あたり純利益)の成長次第になります。過去の増配実績は将来の配当を保証するものではありません。
PER 10.01倍・PBR 0.66倍という指標はどう見ればよいですか?
2026年6月12日時点の予想PERは10.01倍、PBRは0.66倍でした(出典:Yahoo!ファイナンス)。類似企業のPERは約12.4倍とされ、PBRは解散価値の目安とされる1倍を大きく下回っています。一般論として東証プライム全体のPER平均は概ね15倍前後で推移してきました(最新値は日本取引所グループ公表の集計値で要確認)。指標面では割安に見える一方、同社の過去10年平均PERは9.38倍とされ、低いPER・PBRが長期間続いてきた「万年割安株」の性格も指摘されます。割安さが解消されるには収益性・成長性の改善という材料が必要との見方もあり、数字だけで判断はできません。
この銘柄を保有すれば必ず安定した配当を受け取れますか?
いいえ、保証はありません。配当は会社の業績と取締役会の決議に基づいて支払われるもので、業績悪化・キャッシュフロー悪化・財務方針の変更により減配・無配となる可能性が常にあります。とくに同社は景気敏感な総合物流企業であり、景気悪化時には保管貨物・港湾貨物・輸送量の減少が業績に直結するとされます。また、株式投資には元本割れのリスクが伴います。最終的な投資判断は、必ず最新の有価証券報告書・決算短信・適時開示情報を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。